2015年1月31日。妻の実家...

2015年1月31日。
妻の実家「日本料理 桜田」が27年の幕を閉じました。

桜田は、京都の、いや、日本の和食界のトップランナーとして
27年間走り続けてきました。
桜田のお料理は本当に繊細で、何度訪れても飽きのこない、
すばらしく美しいものです。
1月末に閉店が決まってからは、常連様から何度も
「なんで閉店するの」
「もったいない」
というお言葉を頂戴しました。
たしかに、無くなってしまうのは大変惜しい名店です。
お料理の味も落ちていない、まだまだやれるじゃないか。
そうおっしゃるお客様のお気持ちも非常によくわかります。

しかし、家族3人で若い料理人の弟子をたくさん抱え、
昼も夜も営業をされている、
そのご苦労を私は裏で見ておりました。
お客様には決してその姿は見せられませんが、
朝早くから店で仕込み、昼の営業が終わってまかないのお昼ご飯を
一気にかきこんで、15分しかない休憩で倒れるように寝る。
そして、夜の営業が終わって片づけをしたら深夜になる。
それを週一日の休み以外は毎日続けてこられました。

誰か継いでくれる弟子はいないのか。
そういうお声も多数耳にしました。
たしかに、そこそこおいしい料理は
腕利きの料理人なら出せるかもしれません。
しかし、桜田の料理はおいしいのはもちろんですが、
料理の流れや気配り、しつらえなど、料理の腕を磨くだけでは
醸し出すことのできない、ひとつのアートでした。
義理の父である大将は、
若くして妙心寺の塔頭でご修行されていた時代がありました。
また、茶道や器のことも非常に造詣の深い方です。
そういった哲学や気遣いは
料理の修行だけでは身に付くものではありません。

中国の故事に、「創業は易く守成は難し」という言葉があります。
ゼロから新しいものを創り出すのもたしかに難しいことですが、
今あるものを何世代にもわたって継いでいくのも
目に見えない大変な苦労があります。

そして、単に何世代も続ければよい、ということではなく、
一流のクオリティーを維持しつづけるというのは
本当に至難の業です。
「世代交代して味が落ちたなぁ」
「先代はよかったのになぁ」
こういった意見を耳にすることも多々あります。
京都には幾多の老舗がありますが、
その陰でその何十倍もの名店が惜しまれつつ消えていきました。
創業も難しい。守成も難しい。
そして、美しく歴史を閉じることも、
非常に難しいことです。
ダメになって辞めるのは誰でもできることです。
しかし、惜しまれながらも自ら扉を閉じるのは
なかなかできることではありません。
桜田はそのお料理も、その歴史も、
美しく、アートそのものでした。

妻が小学校に入学したその日に開店した桜田は、
妻の結婚式の2週間前に閉店を迎えました。
30人弱のお客様をお迎えするお店でしたが、
家族みんなで力を合わせ、数多くの優秀な料理人を世に輩出し、
まさに、日本の家族経営の美しさを目の当たりにいたしました。
わずかな時間ではありましたが、
歴史の一部を間近で拝見することができ、
私にとっても大変幸せなかけがえのない時間でした。

最終日は、私もお相伴させていただきました。
常連の皆様にご挨拶をし、妻の最後の若女将姿を目の前で見て、
大将の最高のお料理を堪能させていただきました。
今月からは、妻は料理屋の若女将からお寺の若女将になります。
立場は違いますが、私たちも家族力を合わせて、
京都や日本の美を感じていただけるおもてなしをご提供できるよう、
一生懸命精進させていただく所存です。

最後になりましたが、長年にわたり桜田をご愛顧いただきました
皆様方には心より御礼申し上げます。
そして、料理をはじめて50年、
桜田を開店して27年の長きにわたり
すばらしいお料理を作ってこられた大将と女将さんに、
心からの敬意を表するとともに、感謝したいと思います。
本当にありがとうございました。


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